2025年3月27日
K-POPグループBTSのイベントで、メンバーのJINさんに日本人の50代女性が「むりやり」キスしようとした嫌疑で韓国警察が出頭を求め、SNSを中心に物議を醸しています。
犯人とみられる女性が誰なのか、何罪が成立しうるのか?
調査しました。
BTSのJINにキス【50代の犯人女性】はだれ?
問題視されていた「事件」がこちら。
2024年6月に兵役を終えたJINさんが、ファンと触れ合うことの出来るイベントとして開催した「ハグ会」。
「JIN’s Greetings」での一幕でした。
総勢1000名の女性ファンが、JINさんと次々にハグ。
そのなかで興奮したファンが、ハグだけでなく首(頬?)にキスしたという事件でした。

JINさんも顔をのけぞらせて…
少し困っているようにも見えますね
当時の様子は現在もSNSで広く出回っており、犯人の女性を特定しようとする動きも見受けられました。
『職場や住所を特定した!』とするポストも見受けられますが、本サイトでは紹介しません。

迷惑行為や犯罪行為の犯人とはいえ、氏名や住所は個人情報に該当します。慎重な取り扱いが必要ですね。
BTSのJINにキス【50代の犯人女性】は何罪になるの?
50代女性が誰だったのか?という疑問と同時に、SNSを賑わせているのが「犯人が何罪になるの?」という疑問。
中には不同意わいせつ罪(日本刑法176条)の成立を指摘する声も見受けられました。
ここで、同法を確認してみると…
第百七十六条
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
同罪が成立する場面がいろいろと想定できます。
2023年改正前の旧刑法下では、強制わいせつ罪が成立するのは「暴行または脅迫」が加えられた場合に限定されていました。
旧法下で、同罪を認定するための「暴行」は、強盗罪での「暴行」のように相手方の犯行を抑圧するほど強度のものである必要はありませんでした。
が、「犯行を著しく困難にする」程度の態様である必要があり、強制わいせつ罪の成立場面が限定的でした。
そこで、「同意のないままわいせつ行為を行なった者」を処罰する意味合いで、2023年に改正がなされたわけです。

「出頭要請」を出したのが韓国警察であり、日本の警察でないことからすると、本件は韓国の法令が適用される事案なのかもしれませんね。
ちなみに、韓国で性犯罪を取り締まっている法令が『性暴力処罰法』。
日本の法令が性犯罪を親告罪(被害者が告訴しない限り、検察が起訴できない)と規定しているのに対し、韓国では2012年に同法を改正。
被害者の意志を確認することなく、捜査機関が被疑者を告訴できるという仕組みになっています。

政策的な観点のみでいえば、被害者のプライバシー保護よりも犯人の検挙・処罰に重きを置いたシステムといえるでしょう。
BTSのJINにキス【50代の犯人女性】の事件は今後どうなる?
日本では刑事訴訟法198条1項で任意出頭の規定が設けられています。
第百九十八条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
身柄拘束されていない被疑者に対する取り調べの方法ですから、出頭の「義務」があるわけではありません。

とはいえ、正当な理由なく何度も出頭を拒むのも考えもの。
実務上は、ことさらに出頭を拒む場合は「証拠隠滅や逃亡を図っているのではないか?」と嫌疑が深まることで、かえって捜査機関の「逮捕しよう」という決意を強固にしてしまうこともあります。
そして、韓国の刑事訴訟法でも出頭が「義務」とは書かれていません。
とはいえ、一切無視して良いかといわれたら、相当慎重に判断する必要がありそうです。
とくに本件で注意しておきたいのが、日韓両国間では犯罪者の引き渡し条約が締結されていること(『犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約』)。
犯罪の種類(法定刑)にもよりますが、場合によっては任意取り調べを経ずに即座に逮捕。
相手国に身柄の引き渡しが出来るようになっています。
適用対象が「両締約国の法令における犯罪であって、死刑又は無期若しくは長期一年以上の拘禁
刑に処することとされているもの」とされており(同条約2条1項)、相当悪質な犯罪のみが「身柄引き渡し」の対象として規定されています。

上記のとおり、本件でも女性が求めらているのは「任意出頭」であり、捜査機関または司法機関による「出頭命令」が下されたわけではありません。
両国間の情勢にかんがみて、捜査当局同士の「ことさらに事を荒立てたくない」という思惑もあるのかもしれませんね。
国境をまたいだ事件なだけに、今後の推移が気になる事件でした。
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